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2013年9月2日月曜日

『日本銀行』

翁邦雄著『日本銀行』
日本銀行および金融政策の歴史についてバランスのとれた紹介。しかし、日本銀行の歴史や働きについての解説よりも、面白いのは、第7章以降のデフレ脱却のはなしであろう。「処女懐胎的」インフレ理論としての数量説批判、途中まで水平なLM直線、クルーグマンのベビーシッター協同組合論、マネタリストの不快な算術など。

2012年1月10日火曜日

大瀧著『平成不況の本質』

大瀧著『平成不況の本質–雇用と金融から考える』
予想外なことに、ドーアの金融資本主義批判に似て、グローバリゼーション、アメリカ型資本主義および構造改革への批判が展開される。ここでもグローバリゼーション、アメリカ型資本主義が社会的共通資本、人的資本、技能を破壊したことが強調される。ドーアと異なるのは、その批判の展開において、経済理論が利用されるところか。トービンのqに模した人的資本のqや相互規定性の議論は面白い。

2012年1月2日月曜日

R.ドーア著『金融が乗っ取る世界経済』

買ってからずいぶん時間がかかったが、ようやうR.ドーア著『金融が乗っ取る世界経済:21世紀の憂鬱』を読み終える。金融化を押し進めた政策(担当者)、金融業界、くわえてエコノミスト(経済学者)に対する痛烈な批判を展開。現代社会経済に対する洞察、また分析の点でも面白いが、本書を魅力的にしているのは何と言っても「こんな経済・社会(アングロサクソン型)で良いのか!」という「憤り」である。

2011年10月25日火曜日

黒木登志夫著『知的文章とプレゼンテーション』

黒木登志夫著『知的文章とプレゼンテーション』。英語論文の作成、投稿、プレゼンにあたっての筆者の考え、テクニックを紹介した新書.内容自体はそれほど目新しいことはないが、これからそういうことを行う人には新鮮かもしれない。それにしても、英語はずっ〜と努力しつづけないとダメですね。痛感.

2011年9月7日水曜日

カーレド・ホッセイニ


カーレド・ホッセイニ著『千の輝く太陽』を読む。Kite Runnerと同じく、現代アフガニスタンの激動の時代を背景に、2人の女性の人生を描く。アフガニスタンにおいて虐げられた女性の地位とアフガニスタンそのもの――内乱とタリバン支配――2つの悲劇が交錯する世界が描かれる。「だが、この怒りに身を任せることはやめようとも思う。マリアムはそんなことをしない。あの無邪気で賢い笑いを浮かべ、何の意味があるの、と言うだろう。何かいいことがあるのかい、ライラジョ? ライラも、ともあれ先へ進もうと思う。…ライラは先へ進む。何やかや言っても、最終的にはそれしかない。それしかできることはない。そして、希望をもつしかない。」

2011年9月2日金曜日

斎藤他著『マクロ経済学』


斎藤他著『マクロ経済学』を読み終える。2010年に出版され、すでに高い評価を得ている教科書である。評判のとおり非常に優れた教科書である。これまでの教科書がモデルのワーキングがこうこうと説明するものだとすれば、この教科書はなぜそう考えるのかということを丁寧に説明する。とくにミクロ的基礎の解説部分は秀逸である。ただ、どこかでも指摘されていたが、説明が丁寧な分、700ページを超える大著となっている。

2011年8月27日土曜日

The Kite Runner


ずっと気になっていた、カーレド・ホッセイニ『君のためなら千回でも』を読み終える。映画化もされ、文庫本化されからも数年が経っており、日本でも高い評価を得ている作品である。物語はソ連侵攻前の王制から始まり、タリバンの崩壊まで続くアフガニスタンの現在を背景に、アミール、ハッサン、その父ババの人生の交錯を描いたものである。読まれるべき作品である。

2011年6月30日木曜日

盛山和夫著『経済成長は不可能なのか』

盛山和夫著『経済成長は不可能なのか』を読む。経済学者がめった切りである。とくに財政削減論者(社会保障の削減)、規制緩和論者については厳しい。国債発行による財政出動を強調したり、失われた20年の原因を円高に求めたり、また、潜在成長率をフィクションと断じるなど歯切れよく経済学者批判を展開して行く。

2011年6月22日水曜日

中林・石黒編著『比較制度分析・入門』


中林・石黒編著『比較制度分析・入門』を読み終える(というか使い終える)。ゲーム論の基礎的な解説から始まり、契約論、そしていくつかの領域への応用という形で展開される。この手の分野の入門書としては本書は初めてであり,貴重である。「比較制度分析に向けて」や「契約の経済理論」ではどうにも荷が重すぎる。

2011年2月25日金曜日

鈴木亘著『財政危機と社会保障』


鈴木亘著『財政危機と社会保障』。本書はばらばらに論じられることの多い、財政赤字の累積と社会保障制度の行き詰まりの全体像を、簡潔かつ明快に描いたもの。著者の主張は「社会保障関係費」の削減にあり、そのことが保険制度としての社会保障制度、言い換えれば身の丈にあった社会保険制度が展望できると同時に、財政再建への道も開かれるということか。個人的に面白かったのは、産業連関表分析を「大昔の経済学」と切って捨て、医師会のシンクタンクの医療・介護の経済波及効果分析を徹底して馬鹿にしているところと、成長戦略としての「強い社会保障」はマクロ的にはありえないと批判している箇所である。著者の批判がとくに鋭さを増すのは、典型的な規制産業たる医療・介護産業(成長産業になりえない)と既得利益に固執する医療関係団体を論じるときである。

2011年2月20日日曜日

『財界の正体』


川北隆雄著『財界の正体』を読む。等身大の財界エリートを描くということで経団連等の経営者の中央3団体を描く。とくに面白いのは第3章であろうか。同章は、小泉政権下で財政諮問会議や宮内・規制改革会議において財界がどのように経済政策の過程に関与したかを描いている。とくに宮内規制改革会議のでたらめさを描いている点が面白い。自社の利害に関わる派遣業界の関係者が、派遣に対する規制制度を審議する会議に3人も入るというあまりにいびつな構成である。財界傍流宮内が引退後も、依然として厚顔無恥にマスコミに登場する某社社長の行動は恥も外聞もないか。

2011年2月15日火曜日

『マクロ経済学をつかむ』

竹田・小巻著『マクロ経済学をつかむ』
ミクロ経済学との統一性を重視し、重複世代モデルを基礎にしたマクロ経済学の教科書。2006年の出版と古いが、ちょっと変わったマクロ経済学の教科書として面白い。

2011年2月13日日曜日

河村健吉著『影の銀行』


河村健吉著『影の銀行ーもう1つの戦後日本金融史ー』を読む。副題の方がこの本の内容を的確に示している。基本的な論調は経済・社会の金融化に対する批判にある。長年実務に携わって来た著者だけに金融技術にも詳しく、金融を学ぶ者にとって有益であるかもしれない。現実に裏打ちされた批判も興味深い。しかし、文章が硬く(文章表現が拙い?)、また、本筋から離れるエピソードが話の流れを見失わせることがたびたびある。通勤電車の中のお供としては退屈かもしれない。また専門的な金融用語のせいで、残念ながら、この手の知識を持たない読者を遠ざけてしまうかもしれない。

2011年2月10日木曜日

『経済学で使う微分入門』


川西諭著『経済学で使う微分入門』。微分に焦点を絞った経済数学入門書。ありそうでなかった入門書です。丁寧に説明されており、ミクロを学ぶ際には役に立ちそう。ということで推薦書の1つに追加。

2010年12月28日火曜日

藻谷著『デフレの正体』


藻谷浩介著『デフレの正体——経済は「人口の波」で動く』を読む。生産年齢人口の低下が内需の不振を生み出しいると見る。ミソは成長率ではなく、絶対数でみるところにある。団塊の世代(およびそのジュニア)の就業人口の絶対数の変化が消費の不振、内需の停滞を生み出すというのは、かつて吉川洋氏が戦後の高度成長を世帯数の増加で説明したのと似ている。

いずれにせよ、現在の不況が景気循環に起因するものではなく、人口の波という構造的な要因に起因するものだとする論調は面白い。また、統計的な手法を使うこと無く、公表統計を丹念にフォローし、推移をまとめるだけで説得的な議論を展開しているのも参考になる。

2010年11月11日木曜日

Boeri & Ours Labor Econ


T. Boeri and J. van Ours: The Economics of Imperfect Labor Markets.の第1章、第10章(雇用保護法制)および第12章(積極的労働市場政策)がダウンロード可能。また、各章の講義スライドとstataデータがここからダウンロードできる。

2010年10月6日水曜日

桐野夏生「メタボラ」


今回の車中の楽しみとして、桐野夏生著『メタボラ』を選ぶ。単行本の形で出版された当時は、現代の格差社会を描いた小説として話題を呼んだものということで記憶に残っていた小説である。文庫本化を機に手に取ってみる。たしかに、正社員となることに失敗し、派遣労働者となり、さらには外国人労働者と最底辺で交差しあう現代の若・青年層労働者の実態をよく描いている。派遣と請負の違いや、労働者と現地企業の中間にはいる派遣会社や請負会社の実態をよく調べている。

だが、小説としてはそれほど面白いものではない。上巻と下巻ではちがった世界であり、主題もずれてきているような印象を受ける。最後は沖縄での政治活動…と、どうみてもリアリティ(想像力かもしれない)が希薄になり、小説の世界に引き込まれることもなく、惰性で読み終える。

2010年9月21日火曜日

『「分かち合い」の経済学』『第4の手』

今月末も東奔西走。新幹線のポイントがたまる、たまる。今回選んだ車中のお供は神野直彦『分かち合いの経済学』、ジョン・アーヴィング『第4の手』。『分かち合いの経済学』は内容よりも著者の善良さが伝わる好著。まさに「ベバリッジとケインズの良い所を合わせ持った経済学者」である。アーヴィングは相変わらず「人生は不幸で満たされているが、それが人生」という哲学が貫かれている。もっとも、そんなことを考えなくともストーリ展開にひきこまれ、十分、楽しませてくれる。

2010年8月29日日曜日

斉藤貴男著『消費税のカラクリ』


斉藤貴男著『消費税のカラクリ』を読む。

消費税は国税滞納額ワーストワンという事実(p.30)

(1)法人税はもとより、所得税の累進率の大幅な低下。これに呼応した消費税税率の引き上げ論調
(2)景気変動に左右されない安定的な税源という虚妄
(3)「益税」キャンペーンの嘘→「損税」? 消費税はいったい誰が負担しているのか
(4)仕入れ税額控除という仕組み→派遣労働者
(5)輸出企業


ジャーナリストらしく実態を踏まえ、数々の問題点を指摘して行く手法は見事。一気に読ませる。大手新聞社の調査能力はどうなっているのか、あらためて疑問を感じさせる。

2010年8月28日土曜日

丸谷才一『女ざかり』

今月は新幹線に乗る機会が多く、車中のお供として丸谷才一著『女ざかり』を選ぶ。もう古典的と呼んでもいいかもしれない。これまで丸谷才一は食わず嫌いで、まったく読んだことがなかったが、筒井康隆が傑作と評価しているので、それではと選んだ次第。ディケンズ的かもしれないが、個人的趣味から言えば、まったく合わず、何度放り投げようかと思えるほど…。それでも、代替本を用意してなかったので読み終える。筒井風に言えば、まったく教育されないダメな読者かもしれないが、これはどう読んでも評価できない。娯楽なき時代の、文壇内のウチ向き小説のように思える。何でヒットしたかまったく理解できず…ダメな読者です。