オストロムが経済学賞を受賞したことは、とりわけ、経済学者の間で以外に受け止められている。これは当然かもしれない。彼女の研究の多くは市場だけが資源を効率的に配分するという経済学者の合意に異議を唱えるものがおおいからである。もっとも、研究対象が社会的ジレンマの状況を生み出す共有資源の管理ということにも起因するであろうが。多くの紹介記事は、オストロムの研究は共有資源の統治、ガバナンスの研究にあるとしている。彼女の共有資源の管理に研究において特筆する点は、管理の効率性が市場でも政府でもなく、この両者に加え、コミュニティが補完的役割を果たしたときに、もっとも効果的だというものであろう。「統治とは、もはや、他の諸個人が中央政府において行う行動ではない。統治とは、公営住宅の所有者や地方や都会の小規模のコミュニティの市民が学ぶものなのである。」(『平等主義の政治経済学』p.143)
平たく言ってみれば、政府の手助けだけでもだめだだし、個人の自助努力だけでもだめ。コミュニティのみんなで協力してがんばりましょう、ということ。しかも、そうした協力が自生的に発生し、社会的レジンマ状況が解決されているケースが各国に多くありますよ、といこと。