2009年12月28日月曜日

ジャック・アタリ『金融危機後の世界』


アタリの『金融危機後の世界』をようやく読み終える。中心都市なる概念は理解できないものの、日本経済への洞察や金融危機の原因に対する見方は面白い。たとえば、日本経済の回復の3点セットは輸出依存・円安依存・高付加価値化であるとし、次のように述べている。「2001年から日本の経済は回復したが、1990年代の「失われた10年」の影響は日本の社会と経済にしっかりと刻み込まれている。/日本国民は、1980年代の陶酔的熱狂の夢がさめた後、ふたたび貯蓄に回帰した。不況による解雇、賃金上昇の停滞に対する強い不安により、国民の消費は大幅に減少した。/日本企業は、国内市場の不振を埋め合わせるために、円安を追い風として、こぞって輸出に精を出し始めた。とくにアメリカと中国への輸出は、日本の輸出総額の約35%を占めるにいたっている(2008年度)。」

また、金融危機の1つの原因についてはアメリカ経済における再分配にあるとする見解を示している。
「市場は、希少な資源を最適に配分するための最高のメカニズムである。しかしながら、市場が自ら、必要となる法を整備したり、生産手段をフルに活用するための需要を創出したりすることはできない。市場社会を効率的に機能させるためには、法整備によって所有権が担保されるとともに、企業間競争が維持され、きちんといsた賃金や公共支出がなされ需要が創出されることが重要である。/つまり、そのためには、所得や資産の分配における公的介入が前提条件となるのである。

ところが、こうした所得の分配が行われなかったために、少なくともここ20年間、とくにアメリカでは、需要はサラリーマンの借金で維持され、その借金は、借金によって購入された資産を担保としてきた。こうした負債を許容できるレベルに抑え込むためには、アメリカの中央銀行にあたる「連邦準備制度理事会」は、2001年以来、金利の引き下げを余儀なくされて来た。そしてこのことによってFRBは、うまい投資先を見つけられる人々は、多額の借金をすれば金持ちになれる、という環境を作り出したのである。」(p.30)

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