鈴木亘著『財政危機と社会保障』。本書はばらばらに論じられることの多い、財政赤字の累積と社会保障制度の行き詰まりの全体像を、簡潔かつ明快に描いたもの。著者の主張は「社会保障関係費」の削減にあり、そのことが保険制度としての社会保障制度、言い換えれば身の丈にあった社会保険制度が展望できると同時に、財政再建への道も開かれるということか。個人的に面白かったのは、産業連関表分析を「大昔の経済学」と切って捨て、医師会のシンクタンクの医療・介護の経済波及効果分析を徹底して馬鹿にしているところと、成長戦略としての「強い社会保障」はマクロ的にはありえないと批判している箇所である。著者の批判がとくに鋭さを増すのは、典型的な規制産業たる医療・介護産業(成長産業になりえない)と既得利益に固執する医療関係団体を論じるときである。
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