話題の『生物と無生物のあいだ』を読む。面白い。縦糸にDNAの螺旋構造をめぐる研究者間の競争、横軸に著者の「生命とは何か」という根本的な問題が展開され、この手の読み物としてはめずらしくストーリーに引きずり込まれて行く。生命とは何か。(1)自己複製を行うシステムである。これは最近の進化ゲームの流行で社会科学の間でも知られてきた生命認識といえる。(2)シュレーディンガーの話、原子はなぜそんなに小さいのか(人間はなぜそんなに大きいのか)。原子のふるまい、無秩序なブラウン運動、が、全体を平均してみると規則ただしい流れを生み出す。物理法則とは多数の原子運動に関する統計学的な記述である。それは全体を平均したときにのみ得られる近似的なものにすぎない。「生命現象に参加する粒子が少なければ、平均的なふるまいから外れる粒子の寄与、つまり誤差率が高くなる。粒子の数が増えれば増えるほど平方根の法則によって誤差率は急激に低下。生命現象に必要な秩序の精度を上げるためにこそ、〔原子はそんなに小さい」、つまり「生物なこんなに大きい」必要があるのだ」(3)シェーンハイマーの生命観。絶え間なく壊される秩序ーー動的平衡。秩序は守られるために絶え間なく壊されなければならない。生命とは動的平衡にある流れ。
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